弥生(三月)「紅型染・蝶の小紋に漆しゃれ袋帯」-昭和43年 | 着物レンタルあき

2011年5月に最終回を迎えた、「昭和の着物語り・今よみがえる90年前の色彩」では、栗谷家に伝わる大正から昭和初期の着物をご紹介いたしました。
引き続き、2011年7月より昭和40~50年代を中心に「昭和時代の着物」をご紹介して、はや1年が経過いたしました。
2012年7月からは、昨年ご紹介した帯には着物を、着物には帯を合わせてコーディネートした形でご覧頂きます。

【昭和の着物語りー季節の特集】

弥生(三月)「紅型染・蝶の小紋に漆しゃれ袋帯」-昭和43年

安部麗子(あき渋谷店店長)所蔵

立春を過ぎても余寒厳しき日々が続きましたが、沈丁花の花芽もふくらみ始め、まもなく芳香があたりに漂うことでしょう。

3月の茶室には釣釜が掛けられ、陽炎のように揺れる風情を楽しみながらお茶を頂きます。 
ふつふつと湯のたぎる様、釜に水をさし湯が静まる音の変化など、耳を澄ましていると日常では感じられない趣きがあります。

肌で感じる春の暖かさ、花の香り、陽の光、風の音、土の温もりなど、日本人は、いにしえより自然と共生して、心豊かに生きてきました。
日々忙しく余裕のない現代であっても、意識的に五感を研ぎ澄まし、自然と語り合うのもよろしいですね。

今月は昨年ご紹介した「東京染紅型・蝶の小紋」に「漆しゃれ本袋帯」のコーディネートです。

◆漆(うるし)しゃれ本袋帯
 やわらかい斜子織の本袋帯に漆で抽象的な草の模様です。
袋状に織られている本袋帯とはいえ、格調高い織の袋帯とは又違う趣の、お洒落な帯です。私は小紋程度の着物に合わせ楽しんでいます。

◆黒地の蝶の紅型小紋にしゃれ袋帯を合わせた着姿です。(2012年3月掲載の蝶の小紋は
下方にあります。)

◆バストアップです。
深緑の帯〆と黄色の帯揚げを合わせました。

◆お太鼓結びの後姿です。

◆帯を変えて抹茶色の帯のコーディネートもご覧下さい。
  この帯は、珍しい九寸名古屋の無地博多帯です。
  先の帯よりは、シックな取り合わせになります。

◆バストアップです。
  渋い抹茶色の帯に、朱色の帯〆、帯揚げは部分しぼりの柄のある抹茶色です。

◆背面のお太鼓結びです。
  博多織は、糸を先に染めてから織る先染めの織物です。
  打ち込みがしっかりしているので、固い感じです。

◆最後に2種類の帯を合わせた着物の表情を比較してみました。

今回特別にご紹介した、「抹茶色九寸名古屋の無地博多帯」は、若き頃、庭の片隅にある倉庫を片付けている際に、発見した帯です。
姑は日常的に使用していたらしく、所々汚れていました。姑の許可を得て、裏返しをし、汚れている部分が表面に出ないよう工夫して仕立てなおして頂きました。
ここまで利用すれば帯も喜んでくれていると思います。

☆2012年3月掲載の蝶の小紋はこちらから

☆来月は【手描き友禅訪問着」に「ぼたん唐草の袋帯】をご紹介します。

☆過去の「昭和の着物語り」はこちらから

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