2011年5月に最終回を迎えた、「昭和の着物語り・今よみがえる90年前の色彩」では、栗谷家に伝わる大正から昭和初期の着物をご紹介いたしました。
引き続き、2011年7月より昭和40~50年代を中心に「昭和時代の着物」をご紹介して、はや1年が経過いたしました。
2012年7月からは、昨年ご紹介した帯には着物を、着物には帯を合わせてコーディネートした形でご覧頂きます。
【昭和の着物語りー季節の特集】
睦月(一月)水墨画「銀嶺の訪問着」に「波に老松」の袋帯
安部麗子(あき渋谷店店長)所蔵
いよいよ2013年が明けました。
皆様お揃いで、良いお正月をお迎えの事と思います。
新年は初釜など様々な行事が行われますが、仕事初めは1月4日の会社が多いのではないでしょうか。
遥か40数年くらい前までの仕事初めは、女性社員は、ほぼ全員が着物姿でした。
スピーカーから流れる社長の新年の挨拶を部署毎に聞いた後で、祝杯をあげ、お開きになりました。
その後は、お堀端の丸の内のオフィスから晴れ着の女性が三々五々、皇居前広場に集まり、広場は着物姿の女性で埋め尽くされるのです。それは壮観な光景でした。
最近は、仕事初めに全員着物で出勤される事は無くなりましたが、会社の新年会で華やかな振袖や男性は紋付きをお召しになるケースが多くなりました。
着物に携わる人間として、大変うれしく思っております。
今月は2012年1月掲載の征夫作「銀嶺の訪問着」に合わせて、「波に老松」の袋帯のコーディネートです。(「銀嶺の訪問着」のコメントは下方にあります。)
◆この袋帯は平成に入って姉妹店「おりいぶ」にて求めた帯です。
砕け散る波に老松が織り出されています。
松は、年の初めにふさわしい、吉祥模様です。
老松には、うっすらと白い雪が覆っているかのように見受けられ、波は厳しい冬の玄界灘を連想させます。
◆昔は、お正月には新しい着物を用意したものです。
今でも茶の世界では新しい袱紗等で初釜に臨みます。
今回、せめて小物だけでも新しいものをと思い、友人から頂いた帯揚げ、帯〆を使用させて頂きました。
◆水墨画の着物の趣を尊重し、侘び寂びの世界を表現しました。
着物を生かすためには、帯や小物に至るまで、あとは引き算です。
◆バストアップと後姿です。
帯〆の淡い色彩が上品で、控えめな金の模様が目出度さを醸し出して、お正月らしい雰囲気です。
◆後姿からも厳冬から初春へと季節の移ろいが、かすかに感じられます。
◆着物に描かれている、やわらかい若草色の芽が宿っているであろう
「冬木の芽」の色彩を帯〆に持って来ました。
◆春を待つ心が帯〆1本で表現出来ました。
着物は小物を変える事により、装いが様々に変化します。
◆最後に小物による装いの変化をご覧下さい。
今月は、高度成長期の丸の内の仕事初めの様子をご紹介しました。
昨年の晩秋、久しぶりに、新装なった東京駅を訪れました。
周辺は人が多すぎて疲れるので、思い立って若き頃通った馬場先門近くのビルまで足を運び、食事をしました。
IMF総会のお客様をおもてなしする為の、日本文化のパレードが催された
丸の内仲通りは、休日でもあり、人影も少なく静かで、シンプルなライトアップがかえっておしゃれでした。
若き頃、赤いハイヒールを履いて、遅刻をしないよう、東京駅からオフィスまで全力疾走した自分が存在していたのが、不思議な感じでした。
気持ちだけは、あの頃と変わっていないのに・・・・・。
☆2012年12月掲載の征夫作「銀嶺の訪問着」こちらから
☆来月は「梅の小紋」に熊谷好博子作、「松の手描き名古屋帯」をご紹介します。
☆過去の「昭和の着物語り」はこちらから
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